スウェーデン式サウンディング調査(以下SS調査と略す)結果から得られた地耐力数値をみると、いずれのポイントも地表面付近の数値は低く、造成時の地盤締め固め等が不十分であったことが判断できる。通常盛り土をする際は、盛り土を30cm毎に埋めて充分な転圧をする必要がある。
特に地表部の軟弱な地点(調査位置図のF・I)を除けば、基礎底盤の深さでほぼ30KNの地耐力が認められる。30KNは布基礎とするための最低の支持力である。
全般的に地表面下2〜3メートルでもう少し締まった地盤となっている。
ただし(位置図のB・C)地点では下層部でも軟弱な層が続き、北側水路に沿った部分でより軟弱な地盤となっていることが分かる。
これは前述の擁壁施工時の締め固めが不十分だったこと等が原因である。また水路側(位置図A・C)地点および(位置図J)地点で浅層部しかSS調査が出来なかったのはサンプリング調査や試験掘り調査で認められるコンクリート片等が埋められていたことが原因と考えられる。
地盤沈下については地耐力が所要量あったとしても、安全性が保証される訳ではなく、表層部のみならず地下深部までの土質、水位、及びその地盤の履歴等の判定が必要となる。
サンプリング調査では、(位置図B1)地点で多くのコンクリート片の混入が認められており、(位置図B2)地点ではほとんどコンクリート片は認められていない。
北側水路付近で地盤沈下が激しいのは、宅地造成の盛り土にコンクリートガラ等を混入し、さらに充分な転圧が行われていないこと、また擁壁の施工時の締め固めが不十分な事が主因である。
試験掘り調査では、地表面下の50cmまでの比較的浅い部分を4箇所調査している。いずれもコンクリート片が認められ、大きいものは長辺15cm程度、小片は多数掘り出された。
コンクリートガラ等を地下に埋めた場合は、たとえ締め固めを行ったとしても、空間を無くすことは困難であり、降雨時等に徐々に隙間が埋められ、土が流れ出し地盤は沈下することになる。
またガラに木材等の混入がある場合はその腐朽と共に大きな沈下に進行することがある。更に対象物のような粘土質の地盤では、長い時間をかけて、上部建物の荷重により地盤中の水分が抜け沈下する場合がある。
これが圧密沈下と呼ばれる現象である。(漬物が重石等等の荷重を受け、野菜の水分が外部に押し出され沈んでいくことが分かりよい例として挙げられる)
また地盤沈下にはいくつかの傾向があり、沈下が建物とその周辺構造物に対して均一の場合は建物に大きな被害(基礎や外壁の亀裂等)を与えない場合がある。
不同沈下とは沈下量が均等でなく、つまり四角い建物であれば、どこか一辺が沈下するとその変形により荷重が加わり、まず骨組みにあたる構造体に歪みが生じる現象である。当然、直交していた構造部(柱や梁)が斜めに変形し、床や壁にまで歪みが伝播する。
本件建物の地盤は全体的に地耐力が弱い上、盛り土の転圧不足、さらにコンクリートガラや礫が埋められている。適切な地盤対策を行わなければ不同沈下が起こるのは必然とも言える。
造成者の造成地に対する意識の低さは論外としても、建築施工関係者は施工時に地盤の安全性を判断する必要があり、さらに基礎工事の際には地盤の状態に気付くはずであり(基礎掘削の際には通常掘削する程度の浅い場所からコンクリートガラが見つかっていること)
これら関係者が地盤の状態に配慮せずに建設を進めたずさんさが本件の不同沈下を招いたと云わざるを得ない。
令38条第一項で、建築物の基礎は、建築物の作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え、かつ地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなくてはならないと定められている。これは建築物の敷地地盤を調査の上、その地質状況、特に基礎を設置する部分の地耐力を把握の上、
計画中の建物荷重との兼ね合いで法が最低限耐えねばならないとしている荷重や外力に耐え、且つ地盤の沈下や変形に対しても沈下や変形を起こさないような基礎構造を設計、施工すべきであるとの趣旨である。本件建物の建設には地盤調査の上、地耐力のある安定支持層まで、基礎杭を
打たなければならなかったのである。また、そうした法や令は建物の荷重や地震等の災害から建物と住む人を守る最低基準でもある。
令36条第二項及び令38条第一項違反である。
本件建物はすでに不同沈下により傾斜の計測数値が相当高く、経年と共に沈下が進行する可能性があると予測される